環境測定データの統計処理法(2018年版)

 

環境測定データの統計処理法(2018年版)
5,000円 (税込、送料¥250円)
A4判 156頁
Ⅰ 基本統計量
Ⅱ 外れ値
Ⅲ 検定と推定
Ⅳ 回帰分析
Ⅴ 不確かさ
 本テキストは,(一社)日本環境測定分析協会が主催する技術者基礎教育のための「環境測定データの統計処理技術」に関する教材です。環境測定分野の実例データ等をふんだんに用いることで,実用的な内容とすることを志向しました。
 
 一般的な環境測定の日常業務の例では,「母集団(水,大気,土壌など)から少量のサンプルを取る操作」であるサンプリングを行った後,試験室において代表性を損なわない(汚染,損失,偏析等が支障をきたさない)ように試料調製及び前処理をし,感度・精度・選択性・安定性等を確認しながら機器分析による測定及び検量線法(測定成分の濃度と機器の応答との回帰関係線を求める方法)による濃度算出を行って,最後に代表値(測定値)を報告する流れになります。どんなにていねいに同一の測定を繰り返しても,その値が必ずちらばりを持つことは周知のとおりです。統計資料(ちらばるデータ)に囲まれて,仕事をしているとも言えます。
 
Ⅰ章 基本統計量は,統計的なものの見かた,考えかたを学んで,データを正しく読み取り,判断していくことを狙いとしています。正規分布にたっぷり浸って,統計的センスを磨いてください。目の前のデータのちらばりが単なる偶然によるものなのに,無駄に長時間,繰り返し測定を続けることがなくなり,逆に,技術的に意味のあるちらばりを素早く見分けられるようになることを期待します。
 
Ⅱ章 外れ値では,同一集団のデータとして扱えない(偶然のちらばりの範囲と見なせない)外れ値または異常値と呼ばれる測定値の検定(見極め)方法を学びます。「このデータ,他のデータからすごく離れたところにあるな,おかしくないか?」,「このデータは最小値/最大値だが,偶然のちらばりによる範囲内と見なせるだろうか?」等のケースに役立ちます。解析手法への理解が深まることで次のアクションの質が違ってきます。
 
Ⅲ章 検定と推定においては,先ず二組のデータの間で平均や分散に差があるか(二ラボの分析値に差があるか,異なる分析方法に平均値の偏りはないか,前処理法によって結果に違いがあると言えるか等)を検定する手法(t検定,F検定及びχ2検定)を学びます。次いで,三ラボ以上のデータの平均の検定や分析所間精度の算出のための一因子分散分析(残差の分散に対する要因の分散との比をとってF検定する)を修得します。更に,この章では「データのちらばりの止むをえない範囲」である許容差を勉強します。データのちらばりのうち,ある範囲までは「止むをえないもの」として受け入れ,それ以上のちらばりが生じたときにはじめて何らかの処置をとるための手法です。
 
Ⅳ章 回帰分析は,機器の方で自動的(ブラックボックス的)に行われることが多くなりましたが,測定成分の濃度xが確定変数で機器分析の応答yが変量(濃度及びそれ以外の要因でちらばる量)であるとして回帰関係を検量線として数式化することです。良い検量線を作成して分析精度を高めるためには,回帰分析の原理と信頼性評価に関する知識を理解しておくことが強く望まれます。4.4 直線回帰では,基本形(各点が等精度である仮定の下での一次回帰最小二乗法)の他に、切片固定形(ブランク値を切片として固定する一次回帰最小二乗法)及び重み付き回帰(特定の領域でよくフィットするように重み付けする一次回帰最小二乗法)を学びます。
 
Ⅴ章 不確かさは比較的新しい考え方ですが,信頼性を客観的且つ定量的に表すので環境測定分野にも急速に普及してきました。「私の分析は確かです」というだけでは,なかなか通用しません。日常分析においても「私の分析はこのくらい不確かです」と言い,その不確かさが分析に対して要求されるレベル以下であることを示せるようになることを目指しています。
 
 本テキストのその他の目玉として“技能試験における外れ値の二試料データによる評価法”があります。当協会の技能試験技術委員会で検討されてきた技能試験結果の解析方法とグラフによる表示方法(二試料プロットに「二変量正規分布とみなしての95%信頼域楕円」及び「四分位数法に基づくスコア枠」を描き加えた図)を詳細且つ具体的に記載しました(Ⅱ章 2.3 2試料データによる評価法)。技能試験に参加され,信頼性向上を基本使命とされている各事業所の皆様方にとって,貴重な情報であろうと思われます。
 

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