ダイオキシン関係情報
ダイオキシン類(広義ではダイオキシン+ジベンゾフラン+コプラナ-PCB)に関し、その構造式や同族体情報等を以下に示す。狭義のダイオキシン類は下記の構造を有する有機塩素系芳香族物質である。
上の構造式からも分かるように、それぞれジベンゾ-p-ジオキシンとジベンゾフランの基本骨格上の水素原子が1~8個塩素原子に置換した分子の総称である。
塩素原子の置換した位置および数によって16個の同族体と210個の異性体が存在する。以下に同族体情報(分子量、異性体の数等)を示す。なお、通常分析対象となるダイオキシン類は有毒な異性体(2,3,7,8-位置置換異性体17個)が存在する4~8塩素化物の136異性体である。
塩素数 | 英名 | 同族体略号 | 分子式 | 分子量 * | 異性体の数 |
1 2 3 4 5 6 7 8 |
Monochlorodibenzo-p-dioxins ** Dichlorodibenzo-p-dioxins Trichlorodibenzo-p-dioxins Tetrachlorodibenzo-p-dioxins Pentachlorodibenzo-p-dioxins Hexachlorodibenzo-p-dioxins Heptachlorodibenzo-p-dioxins Octachlorodibenzo-p-dioxin |
MoCDDs DiCDDs TrCDDs TeCDDs PeCDDs HxCDDs HpCDDs OCDD |
C12H7ClO2 C12H6Cl2O2 C12H5Cl3O2 C12H4Cl4O2 C12H3Cl5O2 C12H2Cl6O2 C12H1Cl7O2 C12Cl8O2 |
218 252 286 320 354 388 422 456 |
2 10 14 22 14 10 2 1 |
* Cl=35 として計算し、小数点以下は省略した。 (合計75)
** 厳密にはポリクロロジベンゾ-p-ジオキシンではないが、USEPA等に準じてPCDDsに含めた
塩素数 | 英 名 | 同族体略号 | 分子式 | 分子量* | 異性体の数 |
1 2 3 4 5 6 7 8 |
Monochlorodibenzofurans ** Dichlorodibenzofurans Trichlorodibenzofurans Tetrachlorodibenzofurans Pentachlorodibenzofurans Hexachlorodibenzofurans Heptachlorodibenzofurans Octachlorodibenzofuran |
MoCDFs DiCDFs TrCDFs TeCDFs PeCDFs HxCDFs HpCDFs OCDF |
C12H7ClO C12H6Cl2O C12H5Cl3O C12H4Cl4O C12H3Cl5O C12H2Cl6O C12H1Cl7O C12Cl8O |
202 236 270 304 338 372 406 440 |
4 16 28 38 28 16 4 1 |
* Cl=35 として計算し、小数点以下は省略した。(合計135)
**厳密にはポリクロロジベンゾフランではないが、USEPA等に準じてPCDFsに含めた。
※ PCDDsにおける有毒な異性体が存在する4~8塩素化物の異性体の数は、合計49個、 PCDFsにおける有毒な異性体が存在する4~8塩素化物の異性体の数は、合計87個であり、よって合計136個となる。
塩素数 | 同族体 | 異性体 (塩素置換位置) | International-TEF | WHO-TEF (1998) | WHO-TEF (2006) ※ |
4 | TeCDDs | 2,3,7,8- | 1 | 1 | 1 |
5 | PeCDDs | 1,2,3,7,8- | 0.5 | 1 | 1 |
6 | HxCDDs | 1,2,3,4,7,8- 1,2,3,6,7,8- 1,2,3,7,8,9- |
0.1 0.1 0.1 |
0.1 0.1 0.1 |
0.1 0.1 0.1 |
7 | HpCDDs | 1,2,3,4,6,7,8- | 0.01 | 0.01 | 0.01 |
8 | OCDD | 1,2,3,4,6,7,8,9- | 0.001 | 0.0001 | 0.0003 |
塩素数 | 同族体 | 異性体 (塩素置換位置) | International-TEF | WHO-TEF (1998) | WHO-TEF (2006) ※ |
4 | TeCDFs | 2,3,7,8- | 0.1 | 0.1 | 0.1 |
5 | PeCDFs | 1,2,3,7,8- 2,3,4,7,8- |
0.05 0.5 |
0.05 0.5 |
0.03 0.3 |
6 | HxCDFs | 1,2,3,4,7,8- 1,2,3,6,7,8- 1,2,3,7,8,9- 2,3,4,6,7,8- |
0.1 0.1 0.1 0.1 |
0.1 0.1 0.1 0.1 |
0.1 0.1 0.1 0.1 |
7 | HpCDFs | 1,2,3,4,6,7,8- 1,2,3,4,7,8,9- |
0.01 0.01 |
0.01 0.01 |
0.01 0.01 |
8 | OCDF | 1,2,3,4,6,7,8,9- | 0.001 | 0.0001 | 0.0003 |
※:環境省令第十五号(平成19年6月11日)による改正
ダイオキシン類の基準値等
1.耐容一日摂取量(TDI:Tolerable Daily Intake)・・・4pg-TEQ/体重kg/日
TDI:人が生涯にわたって継続的に摂取したとしても健康に有害な影響を及ぼすおそれがない1日当たりの摂取量
法令等:ダイオキシン類対策特別措置法施行令(平成11年12月27日政令第433号)
2.環境基準
法令等:ダイオキシン類による大気の汚染、水質の汚濁(水底の底質の汚染を含む。)及び土壌の汚染に係る環境基準
大気 | 0.6 pg-TEQ/m3以下(年間平均) |
水質 | 1 pg-TEQ/L以下(年間平均) |
水底の底質 | 150 pg-TEQ/g以下 |
土壌 | 1000 pg-TEQ/g以下(調査指標値 250 pg-TEQ/g) |
注) ※土壌にあっては、環境基準が達成されている場合であって、土壌中のダイオキシン類の量が調査指標値である250pg-TEQ/g以上の場合には、必要な調査を実施することとする。(ただし簡易測定法による場合は、分析値の2倍の値で評価する。)※大気、水質及び底質は、検出下限未満は検出下限の1/2の値を用いて毒性等量を算出するが、土壌については、定量下限未満の化合物を0(ゼロ)として算出する。さらに土壌については検出下限以上の値はそのままの値を用い、検出下限未満は検出下限の1/2の値を用いて毒性等量を算出した値を参考値として付記する。 |
3.排出規制
法令等:ダイオキシン類対策特別措置法施行規則(平成11年12月27日 総理府令第67号)
ただし、ガス化改質方式の焼却施設、固形燃料化施設については、以下による。
廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則(昭和46年9月23日 厚生省令第35号)
(1)排出ガスに係る排出基準
特定施設の種類
|
施設規模 (焼却能力)
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排出基準
|
|
新設施設基準
|
既設施設基準
|
||
廃棄物焼却炉(火床面積が0.5m2以上又は焼却能力が50kg/h以上) |
4t/h以上
|
0.1
|
1
|
2~4t/h
|
1
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5
|
|
2t/h未満
|
5
|
10
|
|
焼結鉱製造用の焼結炉 |
0.1
|
1
|
|
製鋼用の電気炉 |
0.5
|
5
|
|
亜鉛回収用の焙焼炉、焼結炉、溶鉱炉、溶解炉、乾燥炉 |
1
|
10
|
|
アルミニウム合金製造用の焙焼炉、乾燥炉、溶解炉 |
1
|
5
|
|
ガス化改質方式の焼却施設 |
0.1
|
–
|
|
固形燃料化施設 |
0.1
|
–
|
|
注) ※「新設施設」とは、平成12年1月16日以降に設置工事がなされた特定施設をいう。 ※廃棄物焼却炉(火格子面積2m2又は焼却能力200kg/h以上)及び製鋼用電気炉についての排出基準:平成9年12月2日以降に設置された施設にいては「新設施設基準」と同一の基準値が適用される。 ※廃棄物焼却炉,ガス化改質方式の焼却施設,固形燃料化施設は酸素16%換算値、焼結鉱製造用の焼結炉は酸素15%換算値とする。 |
(2)排出水に係る排出基準
法令等:ダイオキシン類対策特別措置法施行規則(平成11年12月27日 総理府令第67号)
対象となる特定施設については以下の法令に記載
ダイオキシン類対策特別措置法施行令(平成11年12月27日政令第433号)
特定施設の種類
|
排出基準
|
・硫酸塩パルプ(クラフトパルプ)又は亜硫酸パルプ(サルファイトパルプ)の製造の用に供する塩素又は塩素化合物による漂白施設 |
10
|
・カーバイド法アセチレンの製造の用に供するアセチレン洗浄施設 | |
・硫酸カリウムの製造の用に供する施設のうち、廃ガス洗浄施設 | |
・アルミナ繊維の製造の用に供する施設のうち、廃ガス洗浄施設 | |
・担体付き触媒の製造(塩素又は塩素化合物を使用するものに限る。)の用に供する焼成炉から発生するガスを処理する施設のうち、廃ガス洗浄施設 | |
・塩化ビニルモノマーの製造の用に供する二塩化エチレン洗浄施設 | |
・カプロラクタムの製造(塩化ニトロシルを使用するものに限る。)の用に供する施設のうち、硫酸濃縮施設、シクロヘキサン分離施設及び廃ガス洗浄施設 | |
・クロロベンゼン又はジクロロベンゼンの製造の用に供する施設のうち、水洗施設及び廃ガス洗浄施設 | |
・4-クロロフタル酸水素ナトリウムの製造の用に供する施設のうち、ろ過施設、乾燥施設及び廃ガス洗浄施設 | |
・2,3-ジクロロ-1,4-ナフトキノンの製造の用に供する施設のうち、ろ過施設及び廃ガス洗浄施設 | |
・ジオキサジンバイオレットの製造の用に供する施設のうち、ニトロ化誘導体分離施設及び還元誘導体分離施設、ニトロ化誘導体洗浄施設及び還元誘導体洗浄施設、ジオキサジンバイオレット洗浄施設及び熱風乾燥施設 | |
・アルミニウム又はその合金の製造の用に供する焙焼炉、溶解炉又は乾燥炉から発生するガスを処理する施設のうち、廃ガス洗浄施設及び湿式集じん施設 | |
・亜鉛の回収(製鋼の用に供する電気炉から発生するばいじんであって、集じん機により集められたものからの亜鉛の回収に限る。)の用に供する施設のうち、精製施設、廃ガス洗浄施設及び湿式集じん施設 | |
・担体付き触媒(使用済みのものに限る。)からの金属の回収(ソーダ灰を添加して焙焼炉で処理する方法及びアルカリにより抽出する方法(焙焼炉で処理しないものに限る。)によるものを除く。)の用に供する施設のうち、ろ過施設、精製施設及び廃ガス洗浄施設 | |
・廃棄物焼却炉(火床面積0.5m2以上又は焼却能力50kg/h以上)に係る廃ガス洗浄施設、湿式集じん施設及び汚水又は廃液を排出する灰の貯留施設 | |
・廃PCB等又はPCB処理物の分解施設及びPCB汚染物又はPCB処理物の洗浄施設及び分離施設 | |
・フロン類(CFC及びHCFC)の破壊(プラズマ反応法、廃棄物混焼法、液中燃焼法及び過熱蒸気反応法によるものに限る。)の用に供する施設のうち、プラズマ反応施設、廃ガス洗浄施設及び湿式集じん施設 | |
・水質基準対象施設から排出される下水を処理する下水道終末処理施設 | |
・水質基準対象施設を設置する工場又は事業場から排出される水の処理施設 | |
注) ※廃棄物の最終処分場の放流水に係る基準は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律に基づく維持管理基準を定める命令により 10pg-TEQ/Lとされている。 |
4.その他の基準等
(1)廃棄物(特別管理でないもの)
法令等:廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則(昭和46年9月23日厚生省令第35号)
基準
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ばいじん及び焼却灰その他の燃え殻、汚泥 |
3 ng-TEQ/g以下
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廃酸、廃アルカリ |
100 pg-TEQ/L以下
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(2)水底土砂
法令等:海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律施行令第五条第一項に規定する埋立場所等に排出しようとする金属等を含む廃棄物に係る判定基準を定める省令(昭和四十八年二月十七日総理府令第六号)
基準
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水底土砂(溶出試験) |
10 pg-TEQ/L以下
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備考※S48年 環告14号により検液を作成 |
(3)作業環境
法令等:廃棄物焼却施設内作業におけるダイオキシン類ばく露防止対策について(基発401号の2)(平成13年4月25日 厚生労働省労働基準局長)
管理濃度
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廃棄物焼却施設内の作業環境空気 |
2.5 pg-TEQ/m3以下
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(4)水道水
法令等:「水道水質に関する基準の制定について」の一部改正について(生衛発第1818号 平成11年12月27日 厚生省生活衛生局水道環境部長)において制定、その後、水質に関する省令(厚生省令第101号 平成15年5月30日)において水質管理目標設定項目に分類できない項目(要検討項目)として目標値に変更
指針値
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水道浄水 |
1 pg-TEQ/L以下(暫定)
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(5)水産用水
法令等:水産用水基準2005年版
基準値(淡水域・海域)
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水産動植物保護のための環境の水質基準 |
1 pg-TEQ/L
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